2022/03/19 18:00
徳永英明さんの『鼓動』のメロディーラインの考察・分析(中編)
前回に引き続き、『鼓動』のメロディーラインについて
作曲家・徳永英明に鋭く切り込まないコラムです。
前編に続き、これが中編になります。
前編はこちらになります。
さて。
覚えておられる方はほぼいらっしゃらないでしょうが、
今から20年前くらいになりますが
当時のコラムコーナーで、
徳永さんの【王道系メロディー】についての
私見を書かせていただいたことがあります。
この『鼓動』のサビのメロディーを語るうえで
どうしてもその【王道系メロディー】についてのうんちくを
今一度ひっぱりだしてまいります。
当時のコラムで徳永さんの作られる王道メロディーのサビを
ふたつのタイプに分類しまして、
そのうちの「ベータ型」と名付けたタイプがございました。
まずは、この【徳永英明王道系メロディー ベータ型】について
簡単に今一度ご説明いたします。
サビの部分に注目します。
サビは第1段目から第4段目まであり、
全部で16小節から構成されています。
説明の都合上、実際のキーではなく、
ト長調でご説明してまいります。
(シャープとかフラットが出てこないやつです)
まず、王道系ベータ型の第1段目は
F→G→C→Cというコード進行になります。
つまり、ドファラ→シレソ→ドミソ→ドミソ です。
これだけだと分かりづらいので
ベータ型の代表曲である『もう一度あの日のように』で
説明していくことにします。
歌詞を入れてみます。
次、第2段目。
第2段目は、第1段目のリピートになります。
ドファラ→シレソ→ドミソ→ドミソ。
コード進行もまったく同じ。
メロディーも基本同じです。
そして、第3段目へ。
第3段目も、同じくFから始まります。
聴いている側は、同じくF→G→C→Cのメロディーラインを
おのずと予想してしまうところです。
ですが!
作曲家・徳永英明がここに大きな仕掛けを用意しているのです。
11小節目です。
突然、Fというコードが仕組まれています。
そしてご存じの通り
♪かがやいていた~
のところが、サビの中での一番高い音になり、
一番盛り上がるところになっているのです。
同じメロディー(コード進行)が
三回リピートされるのかな~と思った瞬間の大きな変化。
第3段目の11小節目。
ここの部分こそが王道系ベータ型の肝となる部分なのです。
・・・というわけで、
ベータ型のメロディーのまとめをしますと。
【王道系ベータ型の特徴】
1.サビは2段目まで同じメロディーが繰り返される
2.3段目も同じかなと思わせつつの11小節目で変化
3.変化を付けたその11小節目の一拍目に、一番高い音が配置される(盛り上がる箇所)
この三つが王道系ベータ型の特徴となります。
他に王道系ベータ型に分類される曲は
『僕のそばに』
『Melody―永遠の鍵―』
『愛をください』
『大宇宙』
『セレブレイション』
などがあります。
どの曲も、第三段目の11小節目に
大きな変化が用意されています。
そして、ここで話を『鼓動』に戻します。
『鼓動』のサビ。
第一段目は、
F→G→C→Cという
ベータ型の典型的なコード進行です。
ベータ型の曲、個人的に大好きなんです。
♪きみが~ のりこえた~
と、F→G→C→Cのコードが展開された時点で、
おおこれは!っと思ってしまいました。(初聴きのとき)
抑えきれない胸の高鳴りを感じてしまったものです。
♪ふあんや~ くなんは~~
ここでちょっとメロディーに変化をつけていますが
コードとしてはF→Gの枠内での変化。
上を歌っているっていうのでしょうか。
とても心地よい。
そして、ベータ型の特徴の極み。
第三段目へと突入していくのです。
ですが、『鼓動』のサビの第三段目・・・
作曲家・徳永英明の仕組んだ仕掛けが
なんとも心地よくファンの予想を裏切ってきます。
二つの仕掛けがあるんです。
まず、ひとつめ。
本来のベータ型であれば、
第11小節目に大きな変化が用意されています。
ですが、『鼓動』は、
それより一小節早く
第10小節目で仕掛けてきます。
第10小節目というタイミングで仕掛けてくるというのは
これまでの徳永史で例がない(はず)です。(多分)
そして、もうひとつの仕掛け。
その10小節目で待っているのが
「E7」というコードだということ!
本来、ベータ型では、
ここにはGというコードが待っているはずなんです。
ソ・シ・レの音階です。
Eというのは、ソのシャープ。
ソ#・シ・ミ
つまり半音高い音になるんです。
ん?というちょっとした不安定感を覚えるはずです。
『鼓動』のサビの大きな仕掛けというのは、
徳永ファンが慣れ親しんでいる本来のベータ型より
一小節早く変化をつけてきていること。
そして、その変化というのが、
おのずとソを予想している徳永ファンにとっては
突如奏でられるソ#という音に
なんとも心地よい裏切りを感じさせること。
なんとも心地よい裏切りを感じさせること。
第10小節でE7という半音上がったイレギュラーなコードを入れ込んできて
おやおやっと感じているうちにその第10小節の中で
♪ひーとーつが~
っという箇所で一番高い音に到達してしまいます。
ファンじゃない方にとってはなんともないことかもしれませんが
『もう一度あの日のように』や『僕のそばに』など
知らず知らずのうちに刷り込まれている
ベータ型の王道展開からすると
絶妙なずらし加減というのでしょうか。
もうお分かりかもしれませんが、
前回の更新のAメロでつづったのと同じく
第11小節目の黄色で記した箇所。
第10節目のE7という意表を突くイレギュラーな展開から
この第11小節目の
♪つなが~ってぇ
のところ。
この第11小節目で、安定感のある心地よいコードに
徐々に、なんとも自然に、引き戻されていく心地よさ。
この部分のメロディー展開も秀逸で
なんとも極みなんですね~。
ベータ型が刷り込まれている徳永ファンであればあるほど
10小節目~11小節目が心地よく染みわたって入ってくるはずなんです。
本当にファン心を逆手にとった(?)
絶妙な裏切りとでもいいましょうか
ファンには心地よくてたまらないメロディー構成。
ふー、なんかいろいろと書きましたが・・・
はたしてどれだけ伝わっているのでしょうか。
・・・まだまだ綴りたいことがありまして、
今回を「中編」とし、次回を「後編」とし、
次回に続くこととします。
去年の12月頃から仕事がとても忙しくて
なかなか更新の時間がとれませんが、
「後編」を次回は綴らせていただきます。
この第11小節目で、安定感のある心地よいコードに
徐々に、なんとも自然に、引き戻されていく心地よさ。
この部分のメロディー展開も秀逸で
なんとも極みなんですね~。
ベータ型が刷り込まれている徳永ファンであればあるほど
10小節目~11小節目が心地よく染みわたって入ってくるはずなんです。
本当にファン心を逆手にとった(?)
絶妙な裏切りとでもいいましょうか
ファンには心地よくてたまらないメロディー構成。
ふー、なんかいろいろと書きましたが・・・
はたしてどれだけ伝わっているのでしょうか。
・・・まだまだ綴りたいことがありまして、
今回を「中編」とし、次回を「後編」とし、
次回に続くこととします。
去年の12月頃から仕事がとても忙しくて
なかなか更新の時間がとれませんが、
「後編」を次回は綴らせていただきます。